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トワール:toile
トワール(toile)とはフランス語で、もともとは「亜麻布、帆布」を意味する言葉です。(英語名=canvas) 大きくは2つの意味があり、①リネンや綿、ポリエステルなどを用いた厚手の平織物の事、②裁縫の際に用いる人台(ダミーもしくはトルソー)、若しくは人台上での立体化の事、です。トワルとも発音されることもあります。
生地としてのトワール
平織物とは経糸と緯糸を交互に浮き沈みさせて織る織物です。綿の場合は細布(さいふ)、リネンではピソ・リネンに相当します。帆布、天幕、スーツ、ジャケットなどに幅広く使われています。
人台としてのトワール
こちらの意味に於いては少々幅の広い解釈が有るようです。少し解説致しましょう。「トワル(トワール)チェック」という言葉があります。これは、服の製品化におけるひとつの過程を指しますが、デザインやシルエットを確認する初期段階での立体化の作業です。一般にシーチングという安い平織りの生地をデザイン通りにカッティングし、それを人台(ダミー、トルソー、スタンなどと言います)に着せてシルクピン(ムシピン)で仮止めし、イメージと比較しながら細部を微調整していきます。襟のカーブとか、袖付け部分のいせ込み具合とか、ウェストの絞り込み具合などを立体的に見ながら確認していくのです。基本的には半身(右半身)だけ作って人台に着せて確認しますが、左右非対称(アシンメトリー)の場合は両身作って着せます。ピンで止めただけですのですぐにその場での修正・微調整が可能になっています。そこから更に実際の生地または近い生地を用いてしつけ糸で留めたり、ラフに縫製(ミシンで縫うこともあります)するところまでを「仮縫い」という事もありますが、厳密にはシーチングをピンで仮止めするまでをトワルチェックと言うのが正しいようです。この様な一連のトワルチェックの(立体化)行為自体をトワールと言うこともあれば、この時に用いるシーチング生地の事をトワールと言ったり、はたまた人台の事をトワールと呼ぶことも有るようです。ただ、人台=トワールの使われ方は日本独自のものらしいです。
あの高級メゾンが愛する素材
フランスを代表する世界的高級メゾンのエルメス。そのエルメスのバッグと言えば女性の誰しもが憧れるアイテムですね。エルメスのバッグは最高級の皮革素材だけでなく、普段使いにも嬉しいキャンパス素材からも生まれています。その中でも丈夫で摩擦に強くエルメスが展開するキャンパス素材の中でも特に人気なのが、トワルアッシュ(Toile-H)です。トワルアッシュはエルメス(HERMES)の頭文字Hとトワル(toile)に由来したネーミングの素材です。この素材は2色の異なる糸を平織りにしており、トワルアッシュ単体のデザイン性もさることながら、牛皮との相性が非常に良いため、レザーとのコンビネーションによるアイテムがとにかく人気なんです。エルメスといえば馬具工房から継承された確かな技術力によって、一口にキャンパス素材と言っても2色の糸でしっかりと編み込まれた表面の美しさと耐久性は、他のキャンパス素材アイテムとは格が違うと言えます。実は侮れない素材、それがトワールなのです。